ディベートの定義と論証(松村)の例題解答例
例題1解答例
まず、文章の結論を明らかにしてみよう。例題の文章で最も主張したいことは、
(7)の「Bが犯人であること」だ。そして、その主張の直接的な根拠となっている主張を探す。それは、(8)の「Bには動機もある」と、(1)の「犯人はAかBだ」と、(6)の「Aも犯人ではなく」である。よって、主論証の論証図は以下のようになる。
次に、直接結論を支持する主張の根拠を探す。(8)と(1)を支持する根拠は見つからないので、ここで終わり。なぜ、Aが犯人ではないと考えたのかというと、「AとCはいつもいつも一緒に仕事をする」と「Cは犯人ではない」という主張があるからである。
「AとCはいつもいつも一緒に仕事をする」根拠は示されていない。「Cは犯人ではない」というのは、「Cにはアリバイがある」からだ。よって、
Aが犯人ではないと考えた副論証は次のようになる。
したがって、この文章全体の論証図は先の2つの論証図を組み合わせて、以下のようになる。
例題2解答例
欧米人より日本人の方が労働時間が長いからといって直ちに日本人が働きすぎだとは言えない(1)。なぜなら、第一に(2)、上記文章は、欧米人の労働時間を標準とみなしているが、そうではなくて欧米人が怠惰なだけかもしれないからであり、
第二に(2)、労働時間こそ長いかもしれないが、そこで労働時間の短い時間欧米人よりゆったり働いているかもしれないからである。
解答作成にあたっての注意。
(1)で示しているように、相手の議論に反論するときは、必ず、反論する箇所の相手の発言を引用すること。理由は、どこに反論しているのかを明らかにすることで、議論のやりとりがずれてしまうのを防ぐため、つまり、かみ合った議論をするためである。
反論が複数に渡る場合には、(2)のように、序数をつけよう。各々が独立した論点であることを明らかにするためでる。
例題4解答例
間接論証で重要なことは、「仮定上の話をしている」ということをきちっと理解することである。そこで、論証図においても、仮定であることがきちっと分かるように、仮定の話を、二重線ではさむようにする。
コメを自由化すべきではない、という結論を支持する理由が、コメの自由化によって、コメが自給できなくなることであるのは明らか。間違えやすいのは自由化と日本の農業に国際競争力がないこととの関係くらい。「日本の農業には国際競争力がないので・・・」の”ので”の箇所を見て、論証関係にあると思いそうだが、日本の農業に国際競争力がないという主張は、この場合、コメ自由化の仮定に関係なく成立しているわけだから、2つは論証関係ではなく、「コメ自由化」との結合論証である。
したがって、解答は次のようになる。
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