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競技ディベートの方法

1.論題(proposition)の種類
2.論題を立証/反証する
3.実際のディベートの形式(format)
4.各スピーチの役割

付録

作成者:兼子



ディベートの定義と論証

1.ディベートの定義
2.ディベートの意義・目的
3.論証
3.1.論証の構造
3.2.論証の評価
3.3.面白い論証
3.4.論証を作ってみよう

例題の解答例

作成者:松村




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競技ディベートの方法 (兼子)



1.論題(proposition)の種類


競技ディベートで使用しうる論題には、大きく分けて三種類ある。

  • 事実論題proposition of fact… 「来年度の日本の経済成長率は1%未満だろう」など。
  • 価値論題proposition of value … 「死の自己決定権があることは望ましい」など。
  • 政策論題proposition of policy … 「日本政府は原子力発電をやめるべきである」など。

一般には、ゲーム・バランス、教育的効果、リサーチのしやすさなどの理由で政策論題が使用 されることが最も多い。

ESS系の各種ディベート大会や日本ディベート協会JDAの日本語ディベート大会、「ディベー ト甲子園」などでも、政策論題が採用されている(付録1を参照)。




2.論題を立証/反証する


政策論題は、「○○は××すべし」という形式を取る。
この場合、論題に表される行為は、現実にはいまだ行われていない行為である。
いまだ行われていない行為を正当化するには、どうすればよいか。

  • ある行為が行われたと「仮定して」、その結果、
  • 行われなかった場合に比べると「変化」がおき、
  • その変化が「望ましい」ものであった、


と論題を肯定する側のディベーター=肯定側が証明できたとき、つまり行為をなすことで「メ リット(利点、利益)があるだろう」と証明したときに、論題は正当化される。


逆に言えば、

  • ある行為が行われたと「仮定して」、その結果、
  • 行われなかった場合に比べると「変化」がおき、
  • その変化が「望ましくない」ものであった、


と論題を否定する側=否定側が証明できれば、つまり行為をなすことで「デメリット(不利益、 弊害)があるだろう」と証明したとき、論題は否定される。



例)「日本政府はタバコの使用・販売・輸入を禁止すべきである」

肯定側 → タバコが禁止された、と仮定すると、いままでタバコを吸っていた人はタバコが すえなくなるので、タバコの有害物質を摂取しなくなり、その結果、彼らの健康 への被害がなくなるだろう。故にタバコは禁止されるべきである。

否定側 → タバコが禁止された、と仮定すると、これまでタバコの輸入・製造・販売によっ て主な収入を得ていたタバコ会社は経営に大打撃を受け、倒産するだろう。その 結果、失業者が増え、彼らの生活は苦境に陥るであろう。だから、タバコは禁止 されるべきではない。


このように、ある行為がなされたと仮定して、それによって生じる変化を推測し検討すること を、システム解析(system analysis)と呼ぶことがある。

この方法は、“ディベートの定義と論証”で紹介した「間接論証」の方法を用いたものであることに注意。



問題1;

例のタバコの論題で、上に挙げたものの他に肯定側・否定側でそれぞれ立てられそうな議論が ないかどうか、考えてみよう。



問題2;

以下の場合には、論題が肯定されるかどうか、考えてみよう。

イ. 論題の行為を実行しても、メリットもデメリットも発生しないことがあきらかになった。
ロ.論題を実行したと仮定すると、メリットもデメリットもあることがわかった。




3.実際のディベートの形式(format)


競技ディベートにもいろいろな形式がある。今回はその中でも、1人対1人の 形式であるリンカーン・ダグラス・スタイルの、時間を短縮させたものを用いる。 (通常の活動ではESSの立論6分、反駁4分で行っています)付録2参照。


肯定側(立論) 4分
質疑(否定→肯定) 2分
準備時間 30秒
否定側(立論) 5分
質疑(肯定→否定) 2分
準備時間 1分
肯定側(第一反駁) 3分
準備時間 1分
否定側(反駁) 4分
準備時間 30秒
肯定側(第二反駁) 2分


フォーマットの原則 … 両者のスピーチ時間が同じであること、肯定側で終わること
なぜ肯定側で終わるのか? … 肯定側に論題を正当化する責任がある分のバランス調整


スピーチは、大きく分けて立論(constructive speech)と反駁(rebuttal)に分かれている。

  • 立論…新しい論点をどんどん出していくステージ。
  • 反駁…立論の議論をもとにして、反論・再反論・まとめなどを行うステージ。

反駁には二つのルールがある。

  • 反論はできるが、新しい議論を反駁で出してはいけない(新出議論の禁止)。
  • 反論できるときにしておかなかった場合、あとで反論しても無効になる(時宜に遅れた 反論の禁止)。


※ ここでいう「新しい議論」とは、そこから別の新しい議論が展開されうるような争点を提示 するということ。




4.各スピーチの役割


ここでは、3.で紹介したフォーマットに則って説明する。



@ 肯定側立論

論題を正当化する議論をここで提示する。具体的には、論題を採択したと仮定すると得ること のできるメリットを提示する。



A 否定側立論

論題に反証するためには、否定側は以下の二種類の議論を立論する。
  • 論題を否定するために、論題を採択したと仮定した場合のデメリットを提示する。
  • 論題を正当化する論証を否定するために、メリットへの反論を提示する。


B 質疑

以下のような役割がある。
  • 聞き取れなかったこと、理解できなかったことを確認する(最も基本的)
  • 相手の議論の論拠や前提を確認する(次に自分がそこに反論するため)
  • 相手の議論の矛盾やあいまいさを指摘する


C 肯定側第1反駁

否定側立論に反論するため、以下の二つの作業がある。
  • 否定側が立論で提示したデメリットに反論する。
  • 肯定側立論で示したメリットへの否定側の反論に再反論し、メリットの論証を立て直す。


D 否定側反駁、および肯定側第2反駁

両者ともに、最後のスピーチなので、共通する以下の三つの作業がある。
  • 対立点となった個々の議論に関して決着をつける。
  • その結果、メリットやデメリットがどうなったかを示す。
  • メリットとデメリットを比較し、自分の立場が相手に対して優位であると示す。